局所麻酔と点滴からの鎮痛・鎮静剤の注入で、ほぼ100%の患者さんで無痛状態を実現します。全身麻酔ではありませんので、体にかかる負担も最小限です。
残念ながら当院に透析施設がないため実施しておりません。連携している多施設へのご紹介となります。
肝癌には原発性肝癌(主には肝細胞癌)と転移性肝癌の2種類があります。肝細胞癌に対する無痛RFAの適応は腫瘍の長径3センチ、3個以内が一般的ですが、当院では肝機能が良ければこの条件を超えていても無痛RFAを行っています。
転移性肝癌とは、肝臓以外の臓器にできた癌(原発巣)が肝臓に転移したものを指します。ほぼすべての癌種において、肝臓へ転移する可能性がありますが、実際には消化器系の癌(大腸がん、胃がん、膵がん、胆のうがんなど、)乳癌、肺癌、婦人科系の癌、腎癌などが肝臓への転移を認めることが多いと報告されています。当院ではそのような転移性肝癌についても、積極的に無痛RFAを行っています。転移性肝癌は肝硬変を合併していないため、より大きな、そして、たくさんの腫瘍を焼灼することが可能です(図1-2)。しかし、転移性肝癌に対する無痛RFAはまだ歴史が浅く、外科的手術、抗がん剤治療、無痛RFAのいずれが最良なのか結論がでておりません。転移性肝癌の治療に関しては、無痛RFAのみに固執せず、必要とあれば、抗がん剤治療、放射線治療等をうまく組み合わせて、患者さんがより元気に長生きできるよう努めております。肝内の腫瘍量減退が予後延長に結びつくと予想される場合は、積極的に集学的治療の一環として、無痛RFAをおこなっています。 (全身状態に実施不可能な場合もあります。)そのため、明確な腫瘍の大きさ、腫瘍の個数の制限を設けていません。お手数ですが、ご自身の転移性肝癌の状態が無痛RFAの適応かどうか、個別に外来に受診していただきご相談いただければ幸いです。大まかな目安としては、最大径5cmの場合は3個程度まで、最大径2cmの場合は10個程度までとなります。
一般的に治療が難しいと他院で断れたケースにおいても無痛RFAを行っています。これまでそのような「治療困難箇所」も含めた治療成功率は99.8%を達成しています(図3)。
当院におけるラジオ波治療は大木が担当いたします。大木はこれまで、延べ約4000件(2024年4月現在)を無痛RFAで治療した経験があります。ラジオ波焼灼療法にはいくつか苦手とする部分があります。ひとつは、超音波を用いて行いますので、超音波で描出できない腫瘍の治療が困難であること。もう一つは、熱で焼灼しますので、標的腫瘍が他臓器(心臓、胆のう、腸管)と隣接すると治療が困難であることです。前者に対しては、造影超音波という最新の超音波を用いて対応し、それでも描出困難な場合は、腫瘍の場所を肝臓内の血管等の位置から推察し治療を行っています。また、後者に関しては、人工胸水、人工腹水を用いて安全に無痛RFAを行う努力を行っています。これまで治療を行った症例の中には、腫瘍が心臓と接する症例、腸管と接する症例、胆のうと接する症例、血管と接する症例、肺の直下にある症例、肝門部(肝臓の中心部分)にある症例が含まれています。入院期間が想定よりも延長してしまうような大きな偶発症の発生率は約0.5%であり、その中で一番多いものは輸血を要する出血となっています。
当院では転移性肝癌に対して、積極的に無痛RFAを行っています。強固なエビデンスに欠ける治療であることは十分に認識しております。転移性肝癌は、転移である以上、全身の疾患であり、各癌種に応じた化学療法が治療の根幹であると考えます。また一部の癌種によっては、外科的な手術が推奨される場合もあります。私たちがこのような治療を行っているのは、標準治療で選択できるものが無くなってしまった、様々な背景により標準治療を受けることができない、そのような患者さんに少しでも元気で長生きできる時間を作るお手伝いができればと思っているからです。転移性肝癌に対するラジオ波焼灼療法は、当院の倫理委員会で正式に承認されており、前任地においてRAFAEL studyとしてUMINに登録されております(UMIN000020250)。これまでの経験は、随時学会・論文等の科学的形式で公表しております。